院長の曽束です。
「目の下のクマ・ふくらみが気になるので、脂肪を取ってください」 最近、こうしたご相談でご来院される患者さんが非常に増えています。SNSなどの影響もあり、「クマ取り=脱脂(目の下の脂肪を取る手術)」というイメージが定着しているのを感じます。
しかし、当院の目の下のクマ・たるみ治療においては、原則として「脱脂(脂肪を切り取って捨てること)」はしない方針をとっています。 本日は、なぜ私が安易な脱脂にブレーキをかけるのか、その理由と「不都合な真実」についてお話しします。
「捨ててから、また入れる」という矛盾
現在、多くのクリニックで主流となっているのが、「目の下の膨らんでいる脂肪を取り除き(脱脂)、そのままだと凹んでしまうので、太ももやお腹から別の脂肪を採取して、目の下に注入する」というセットの治療です。
しかし、顔面や組織の再建を長年やってきた形成外科医の視点からすると、これにはどうも首を傾げたくなります。 「せっかくそこにある自分自身の生きた脂肪(眼窩脂肪)を切り取って捨てておきながら、わざわざ体に別の傷をつけて脂肪を採り、それをまた注入するって……ちょっと不自然じゃない?」と。
定着するかも分からない別の脂肪を注入するくらいなら、最初から「今、目の下で膨らんで余っている脂肪」を捨てずに、そのままスライドさせて凹んでいる部分(段差)に敷き詰めてあげれば良いはずです。 これが、当院が基本方針としている「眼窩脂肪移動術(裏ハムラ法・表ハムラ法など)」の考え方です。
脱脂のもう一つの落とし穴「目の上がくぼむ」
さらに、私が安易な脱脂をしたくない理由がもう一つあります。それは「目の上(上まぶた)のくぼみ」です。
眼球の周りにある脂肪(眼窩脂肪)は、実は目の奥の方で、上と下で繋がっています。眼球というデリケートなボールを包み込む「クッション」のような役割ですね。 下の膨らみだけを見て「脂肪が多いから」と無闇に引っ張り出してしまうと、クッション全体のボリュームが減ります。するとどうなるか。重力と眼球の重みによって、上の脂肪が奥へと引き込まれ、結果として「上まぶたがくぼんで、老けて見える」という現象が起きてしまうのです。
目の下だけが綺麗になっても、目の上がくぼんでしまっては、お顔全体の若々しさは失われてしまいます。
【本音】実は、移動術(ハムラ)でも理屈上はくぼみます
さて、ここまで「だから脱脂ではなく、当院は移動術(ハムラ)をやります」と胸を張って言ってきました。
しかし……ここで皆様に、外科医としての「不都合な真実」を正直に告白しなければなりません。
実は、脂肪を切り取って捨てない「眼窩脂肪移動術(ハムラ法)」であっても、理屈から言えば、将来的に目の上のくぼみは生じ得るのです。 なぜなら、脂肪を捨てないとはいえ、「目の奥にあった脂肪を、前や下の方向へ引っ張り出して(移動させて)固定する」ことには変わりないからです。クッションの全体量は変わらなくても、配置が前にズレることで、奥にある上の脂肪はやはり引っ張られ、わずかにくぼむ方向へと力が働きます。
「うちの手術なら絶対に目の上はくぼみませんよ!」と言い切れたら、どれほど営業的にラクかと思います(笑)。 ですが、顔の解剖学(ミクロの構造)を徹底的に学んできた形成外科医としては、この「理屈上どうしても起こり得る変化」に目をつぶって、患者様に嘘をつくことは絶対にできません。
魔法の手術はないからこそ、誠実に話し合いたい
美容の手術に、「100%メリットしかなく、何の代償も伴わない魔法」は存在しません。 何かを良くしようと組織に手を加えれば、必ずどこかに別の「理屈(物理的な影響)」が生じます。
だからこそ大切なのは、「脱脂」や「脂肪注入」、「ハムラ法」といった流行りの術式の名前だけでクリニックを決めることではありません。 お顔全体の骨格、皮膚のたるみ具合、そして「数年後、数十年後に組織がどう変化していくか」という解剖学的な理屈を熟知した上で、「あなたのお顔にとっては、どの方法が一番メリットが大きく、デメリットが少ないか」を、包み隠さず誠実に説明してくれる医師を見つけることです。
「ここを切れば、理屈上こっちにはこういう影響が出ます。それでもやりますか?」 当院のカウンセリングでは、そんな少し夢のない、耳の痛いお話もしてしまうかもしれません。しかしそれこそが、大切な患者様のお顔をお預かりする、私の最大の誠意だと思っています。
目の下のたるみでお悩みの方は、ぜひ一度、そのお顔の「理屈」を私と一緒に紐解いてみませんか?万代のクリニックでお待ちしております。









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