院長の曽束です。
6月に入り、日々の診療や手術の合間を縫って、現在私はある作業に追われています。 それは、今月末に締め切りを迎える「JSAPS(日本美容外科学会)美容外科専門医」の認定申請に向けた、膨大な書類や手術記録の作成です(毎晩、過去のカルテと睨めっこする日々が続いています…笑)。
当院は「形成外科・美容外科」を標榜していますが、患者様から「形成外科と美容外科って、何が違うんですか?」とご質問をいただくことがよくあります。 本日は、私が現在書類の準備をしている「JSAPS」のお話も交えながら、「美容外科の手術において、ベースに『形成外科』の厳しい経験があることが、なぜそれほど重要なのか」という、私の医療哲学の根幹についてお話ししたいと思います。
「美容外科」という看板の裏側にある現実
まず、皆様に知っておいていただきたい大切な事実があります。 それは、日本の法律(医療法)では、医師免許さえ持っていれば、極端な話、それまで全くメスを握ったことがない医師であっても「美容クリニック」を開業し、「美容外科医」を標榜できてしまうということです。
SNSを開けば魅力的な美容医療の情報が溢れていますが、「どのクリニックの、どの先生を選べば安全なのか」を患者様ご自身が見極めるのは、本当に難しくなっている時代だと思います。 「美容外科」の看板を掲げること自体は、実はそれほど難しいことではありません。しかし、お顔という極めて複雑で繊細な構造にメスを入れる以上、「見よう見まねで手術の手順を知っている」ことと、「万が一の事態が起きても、確かな技術で確実にリカバリーし、患者様を守り抜ける」ことの間には、天と地ほどの差があります。
「マイナスをゼロにする」形成外科での20年
その「万が一の時に患者様を守り抜く力」を養う場所が、私が約20年にわたり身を置いてきた「形成外科」というフィールドです。
形成外科とは、「体の表面の異常や欠損を、機能的にも見た目にも正常な状態(ゼロ)に戻す、再建の医療」です。 私はこれまで形成外科専門医として、そして後進の医師を育成する「形成外科領域指導医」として、数多くの手術に携わってきました。中でも私の専門領域である「顔面神経麻痺の再建」や、顕微鏡を使って1ミリの血管や神経を縫い合わせる「マイクロサージャリー」などは、顔の奥深くにある複雑な解剖を、ミクロン単位で完璧に熟知していなければ成立しない手術です。
「皮膚をめくったその下に、絶対に傷つけてはいけないどんな神経や血管が隠れているのか」 「万一、組織が壊死しそうになった時、どうやって血流を再建して助け出すのか」
形成外科医は、大学病院などの最前線で、外傷やがん切除後の再建という過酷な現場に身を置き、こうした「皮膚の下の真実」と「合併症を乗り越える力」を、血の滲むような思いで徹底的に叩き込まれます。
「見えない土台(解剖学)」を知らずに、美しさは作れない
美容医療において、何よりも最優先されるべきは「徹底した安全性の確保」です。
人間の体は家づくりと同じです。 壁紙(皮膚)を綺麗に張り替えるだけの手順なら、少し学べば誰でもできるかもしれません。しかし、壁の裏にどんな太い柱(骨)があり、どこに電気の配線(神経)や水道管(血管)が通っているかを知らないまま釘を打ち込めば、取り返しのつかない大事故に繋がります。
美容手術においても、骨格から神経の走行まで、顔面全体の解剖を骨の髄まで知り尽くしていなければ、安全な層で手術を行うことはできません。形成外科で培った「解剖学の深い知識」と「再建の技術」という強固な土台を持っていること。これこそが、患者様に万が一の不安も与えない、最大の安全網(セーフティネット)になるのです。
形成外科出身が少ない新潟で、JSAPS専門医に挑む理由
実は、ここ新潟県内においては「形成外科での厳しい修練を積んだ上で、美容外科に携わっている医師」自体が非常に少ないのが現状です。
その上で、私が今回申請の準備に奔走している「JSAPS(日本美容外科学会)」は、まさにこの「形成外科の土台」を厳しく問う学会です。JSAPSは、ベースとして「形成外科専門医」の資格を持っている医師でなければ、そもそも専門医になるための審査を受けることすらできません。
ただでさえ形成外科出身の美容外科医が少ない新潟において、このJSAPS専門医の資格を取得している医師はごく僅かです。驚かれるかもしれませんが、現在、県内の大学病院や大きな総合病院にすら、JSAPS専門医は在籍していません。それほどまでに、新潟においてこの厳しい基準をクリアした医師に出会うことは稀なのです。
「すでに形成外科の専門医も指導医も持っているし、開業もしたのだから、わざわざ大変な思いをして新しい専門医を取らなくてもいいのでは?」と言われることもあります。 しかし、医療、特に美容の分野は日進月歩です。「形成外科の技術があるから大丈夫」とあぐらをかいてしまえば、そこから先の進化はありません。
大学病院などで培われるような「高度な知識と徹底した安全管理」をベースにした美容医療を、万代という身近な街のクリニックで提供し続けること。患者様にとって最も美しく、安全な結果を追求するために、私自身が学びを止めるわけにはいかないのです。
政府専用機「シグナス」の名に恥じぬように
当院の名前「シグナス(Sygnus)」は、要人を安全に運ぶ政府専用機のコールサインに由来しています。
美容医療という、患者様の人生を乗せたフライトにおいて、乱気流(リスク)を予測し、完璧な準備のもとで安全に目的地(理想の美しさ)までお連れする。 そのために不可欠なのが、形成外科で長年培ってきた「見えない基礎工事」の力です。
書類の山と格闘する日々は今月いっぱい続きそうですが(笑)、これからも「安全性」と「仕上がりの美しさ」のどちらも一切妥協せず、患者様に真摯に寄り添う質の高い医療を
ここ新潟・万代から皆様にお届けしてまいります。









Google map
